2014年07月22日

五木寛之著 『サンカの民と被差別の世界』


「隠された日本」シリーズの第1弾。「中国・関東」篇。
2002年に講談社より刊行された『日本人のこころ4』を文庫化したもの。

瀬戸内海の「家船」で暮らす海の漂泊民、「サンカ」と呼ばれる山の漂泊民、エタ・非人と呼ばれた被差別の民。平地に定住して農業に従事する人とは異なる暮らしをしてきた人々について論じている。

沖浦和光(『瀬戸内の民俗誌』『幻の漂泊民・サンカ』)や塩見鮮一郎(『浅草弾左衛門』)の話を受けて書かれている部分が多いのだが、自ら現地を訪ねて取材し思索を深めているところに共感した。

日本の歴史をふり返ってみて、私たちは合戦といえば、関ケ原や大坂の陣などをすぐに思い浮かべる。平野部の合戦、陸上の戦いしか頭に思い描いていなかった気がする。しかし、水上や海上での合戦というものが日本の歴史を動かしてきた、という面もある。
卑賤視したり、差別するということにも、もうひとつ別の面がある。その背景には情念としての畏敬の念があり、ひょっとすると憧憬さえあったかもしれないとも感じる。「聖」と「俗」が、「聖」と「穢」が、「聖」と「賤」が重なりあう。
転向する前の柳田民俗学、柳宗悦らの民芸運動、北原白秋らの新民謡運動。これらはすべて同じ根を持つものではないか。いずれも、大逆事件に発する知識人の挫折と転戦のひとつの歴史だ、と私には思える。

このシリーズは、最後まで読んでいきたい。

2014年4月10日、ちくま文庫、780円。
posted by 松村正直 at 15:31| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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