26歳で第1歌集『秋の椅子』を出して、この歌集が10年ぶりの第2歌集であった。新たに武下奈々子の解説が付いている。
雛芥子の花あかしあかし芥子畑にめまふほど疼くは若さかもしれぬ
イヤリング揺れつつ耳朶に触れて居り坂多き町にバスは入りて
育ち来し家の雰囲気それぞれに持てるさびしさを夫も知るらし
整然と足場組まれし工事場の深夜どこよりか水がしたたる
燿ひて青葉ゆたけき逢ひなれど人を容(い)るるは易くはあらず
命綱ひとりの男に握らせてためらはず海に入(い)りゆくか海女は
耳の凹凸きはやかに浮かぶ夜の車内 耳あることが不意に恥かし
女の首蛇のごとくに自在ならば男の嘘の表情も見えむ
たをやかにあふられて身のよろめけば歓びに似る春の突風
咲き初めていたましきまで花白き辛夷よ今日は汚(よご)れず了へよ
若々しい青春の歌が多い。自らの若さを誇るような、あるいは持て余すような歌。さらには相手との距離をどう取れば良いのか、どのように心を許せばよいのか迷う歌が目に付く。
1首目は巻頭の「芥子畑」にある一首。真赤に咲き乱れる雛芥子を前にして、圧倒されつつ心惹かれていく様子が描かれている。
2首目はイヤリングが耳に触れるのを感じている歌。自意識の強さが表れている。
5首目の「人を容るる」は、この歌集の一つのテーマともいうべき言葉。
7首目は名歌と言っていいだろう。「耳の凹凸」にかすかなエロスがある。
10首目は「汚れず」を「よごれず」と読ませているが、同時に「けがれず」の意味も浮かんでくる。「今日は」は「せめて今日一日は」といった思いであろう。
2014年3月10日、現代短歌社、700円。
第三歌集の出版おめでとうございます。
ツィッター、始めました。
今までの屈辱を跳ね飛ばすために楽しんでやっています(^^)/
かりんに戻りましたが、苦渋してます。
力の限り、頑張りたく思っています。
女の執念のごとき疑念の思いはおそれおののくものがある。蛇のごとく自在、とは核を衝いている。男にかぎらず女も嘘をひめている。作者はきっと蛇のような能力であらむと希んでおられる。おだやかな清(すず)しき女性の裡にみる本質であろうか。ほかにも蛇を詩った秀歌がある。
お互いに頑張っていきましょう。
小川さま
鑑賞をお寄せいただき、ありがとうございます。