監督:纐纈あや プロデューサー:本橋成一
タイトルは「ほうりのしま」
山口県熊毛郡上関町の祝島(いわいしま)で30年近くにわたって原子力発電所建設に反対し続けている島民たちを描いたドキュメンタリー映画。2010年公開。
海や山などの島の自然とそこに暮らす人々の生活が丁寧に描かれている。棚田での米作り、鯛の一本釣り、日用雑貨店での買い物、船のペンキの塗り直し、小学校の入学式、お墓参り、炬燵でテレビを見ながらの年越しなど。島の四季の移り変わりは美しく、人々の暮らしぶりはどこか懐かしさを感じさせる。
映画では、町議会でのやり取り、海上での抗議活動、島内をめぐるデモなど、原発建設反対の運動も随所に描かれているが、それは前面には出てこない。声高に主張が述べられることもない。けれども、島の日常を描くことを通じて、代々島に住み続けてきた人々の土地や祖先や自然に対する思い、原発に反対する根拠といったものが、じんわりと観る者の胸に伝わってくる。
「原発は何もかも悔しいねえ。人間どうしの争いごとが、いちばん悔しいかな。友達を引き裂いて、親戚を引き裂いた」という島民の言葉が重い。
すぐれたドキュメンタリーである。
立誠シネマ、105分。
2014年07月13日
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