「隠された日本」シリーズの第三弾。「大阪・京都」篇。
2001年に講談社より刊行された『日本人のこころ1』を文庫化したもの。
タイトルは、大阪は宗教都市であり、京都は前衛都市であるという意味である。
私たちが商業都市、東アジアのビジネスセンターと呼んでいる大阪には、じつは「宗教都市」という原風景があった。
京都は千二百年の歴史と伝統がある「古都」だ、と思っている人がほとんどだろう。しかし、私は「京都は前衛都市である」といいたい。
著者は大阪の基盤に、蓮如による大坂御坊(石山本願寺)の建立と寺内町の発展を見る。大阪のメインストリートである「御堂筋」が、外国で言えば「聖フランチェスコ通り」のような感じの宗教的な名前だという指摘など、普段は全く意識していないだけに実におもしろい。
内田樹も『聖地巡礼』の中で
大阪に元気がなくなったのは、本来この土地が持っていた霊的エネルギーを賦活する装置が機能しなくなったからだっていうのが僕の持論なんです。
と述べており、共通するものを感じる。
2014年6月10日、ちくま文庫、780円。