2014年06月28日

内田樹著 『呪いの時代』


2008年から「新潮45」に不定期に連載された文章を中心にまとめたもの。
「呪詛」と「贈与」が全体のテーマになっている。

どのようにすれば私たちは人々を苦しめ分断する「呪詛」を抑え、励まし結び付ける「贈与」を活性化することができるのか。コミュニケーションにおいても、経済においても、外交においても、生き方においても、すべてに共通する問題として繰り返し語られている。

「努力しても報われない」という言葉をいったん口にすると、その言葉は自分自身に対する呪いとして活動し始める。
イデオローグたちが、同じ名を掲げた政治党派の犯した失敗について責任を取ることを拒否するとき、その名を掲げた政治思想は死滅する。
人間が持つ能力は、能力それ自体によってではなく、ましてやその能力が所有者にもたらした利益によってではなく、その天賦の贈り物に対してどのような返礼をなしたかによって査定される。

こうした言葉は、格言や箴言のように胸に響いてくる。

著者の本は、因果関係が実は逆であることを指摘したり、枠組みそのものをひっくり返したり、別の文脈によって新たに読み換えたりといった論理の鮮やかさが随所にあって、おもしろい。そうした刺激を受けることで、自分もまた新たに考え直してみようという気にさせられるのだ。

2011年11月20日発行、新潮社、1400円。


posted by 松村正直 at 12:23| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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