2014年06月02日
五木寛之著 『隠れ念仏と隠し念仏』
「隠された日本」シリーズの第2弾。九州・東北篇。
2001年に講談社より出た単行本『日本人のこころ2』を文庫化したもの。
江戸時代、浄土真宗が禁じられた薩摩藩や人吉藩において、自分たちの信仰を隠しつつ、「講」というネットワークや本願寺とのつながりを維持してきた「隠れ念仏」。東北の岩手を中心として、本願寺とも離れて徹底した在家の信仰を貫いてきた「隠し念仏」。
九州と東北に残るこれらの信仰の姿を通して、著者はこの国の歴史や心のあり方を見つめ直していく。
「隠れキリシタン」は有名であるが、「隠れ念仏」や「隠し念仏」のことは、これまで聞いたことがなかった。けれども、そういう視点から捉えることで初めて見えてくる歴史があり、興味を引かれる。
新しく入って来た宗教がどのように人々に受容され、元からあった信仰と混じり合って定着していくのかという問題もおもしろい。これは宗教だけに限らないことであり、「異端」を排除して「正統」の方だけを見ていても決してわからない問題であるに違いない。
2014年5月10日、ちくま文庫、780円。
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