副題は「新哲学対話」。絵:植田真
2004年に大和書房から刊行された本に加筆修正して、文庫化したもの。
ミューとエプシロン(エプちゃん)の二人が、人生や時間についての素朴な疑問をめぐって、さまざまな話を繰り広げる。
・「人生は無意味だ」って、どういう意味なのだろう
・十年前のぼくも、ぼくなんだろうか
・ことばで言い表わせないもの
・自分の死を想像することはできるか
・未来は存在しない?
という5つの話が収められている。
どれも難しい言葉は使わず、それでいて深いところへと思索が誘われる。
自分は、自分ひとりだけでは、〈いま〉の自分だけに断ち切られてしまう。
ことばは、何かを語ることで、語りきれていないものを影のように差し出してくる。
死は可能性を奪いさる。未来という、新たなものの出現の予感。それを、死はそっくり切り取ってしまう。
哲学というのは、私たち自身が持っている言葉を最大限に使って、手探りで探究していくものだということが、実感できる一冊である。
2014年4月25日、中公文庫、720円。