2014年05月04日

吉岡太朗歌集 『ひだりききの機械』

ごみ箱に天使がまるごと捨ててありはねとからだを分別している
転送機で転送できない転送機 明日は今日より少しだけ夏
抜けてきたすべての道は露に消え連続わたし殺人事件
水遁の術であそんでいる祖父の竹筒が闇に薄れゆくまで
ローソンとファミリーマートとサンクスとサークルKのある交差点
川底の砂に半ばを埋もれつつ葉は揺れており薄暮のみずに
雨粒のひとつひとつが眼球でそこにうつっている春の町
河原町通りはたぶん烏丸のことを風聞でしか知らない
耳当てをあてるみたいに自動車はサイドミラーをとざして眠る
エントリーシートに今朝の鉱山でとれた砂金をふりかけている

第50回短歌研究新人賞を受賞した作者の第1歌集。
ハードカバーで1800円という価格は珍しい。今後こうした2000円を切る歌集が増えていくだろう。その分たくさん売れると良いのだが。

1首目は天使の「はね」と「からだ」を分別するという発想にリアリティがある。
3首目、過去の自分が次々と抹消されて更新されていく感じだろうか。
6首目は繊細で美しい叙景歌。
8首目の「河原町通り」と「烏丸(通り)」はともに京都を代表する通りで、平行して走っている。永遠に出会うことはないわけだ。
10首目は就職活動を詠んだ連作「氷河だより」の1首。この歌集には30の連作が収められているが、「もしスーパーマーケットが戦場になったら」と「氷河期だより」が特に印象に残った。

関西弁を使った歌がたくさんあるのだが、それ以外に「かたがむ」という言葉を使った歌が3首ある。これは石川県や富山県で使われる方言なので、どうしてかと不思議に思ったのだが、あとがきやプロフィールに「石川県小松市生まれ」とあって納得した。

2014年4月1日、短歌研究社、1800円。

posted by 松村正直 at 14:44| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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