2014年03月23日

「レ・パピエ・シアン2」2014年3月号

特集は「ソチ五輪を詠む」。
こうした特集をタイムリーに組んでいく企画力や行動力が、通巻183号という同人誌としては驚異的な継続につながっているのだろう。

大辻隆弘さんの「戦後アララギを読む」は「高安国世から見た近藤芳美」の4回目。講演に大幅に加筆したもので、「ちょっとマニアックですが」と自分でも書いている通りの細部へのこだわりが光る。

問題は、近藤が戦後、京都の高安宅を訪れたのがいつであったか、ということ。
大辻はまず近藤の『歌い来しかた』に記されている「昭和二十四年初頭」が勘違いであることを述べる。

この本は、困ったことに、年月日の記述が実に不正確でいい加減です。近藤は、自分の既刊歌集を見ながら、詳しく調べることなく適当に年月日を想像して、思い出を書き綴っていったものと見えます。

ちょっと厳しい書き方ではあるが、これは『歌い来しかた』を資料として使う場合に、気を付けておかねばならない点だろう。この本は1985年に雑誌「世界」に連載されて1986年に岩波新書から刊行されたもの。30年以上前の出来事の記述が不正確になるのも、ある意味で止むを得ないことではある。

大辻はその後「ぎしぎし」23号(昭和23年11月28日発行)の後記から、近藤が高安宅を訪れたのが昭和23年11月14日であることを明らかにする。

その上で、その「14日」が「15日」の間違いではないかという話へ進んでいくのだ。京都市のその日の最低気温を調べたりと、まあ、本当にマニアックではあるのだが、こうした努力や姿勢は大事なことだと思う。

この件については面白そうなので、何か他に資料がないか調べてみたい。

posted by 松村正直 at 11:21| Comment(2) | 短歌誌・同人誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつもお読みいただき、ありがとうございます。多くの学生歌人が初めて近藤と会った日なので、ほかにも資料がありそうですね。

Posted by 大辻 at 2014年03月26日 08:18
「戦後アララギを読む」、毎号楽しみにしています。歌人同士の関わりや影響関係が濃密で、スリリングですね。
Posted by 松村正直 at 2014年03月27日 23:59
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