2014年03月20日

早川タダノリ著 『神国日本のトンデモ決戦生活』


2010年8月に刊行された『神国日本のトンデモ決戦生活―広告チラシや雑誌は戦争にどれだけ奉仕したか』(合同出版)を文庫化したもの。

1930年代から敗戦にかけて戦意高揚のために行われた様々なプロパガンダを取り上げて紹介した本。「写真週報」「主婦之友」「婦人倶楽部」「家の光」「国定教科書」など、数多くの図版をカラーで収めている。

タイトルからもわかるように、当時の宣伝や思想に対してトンデモ本的な扱いをしているので、文章の書き方は軽くて、そこに多少の違和感はある。けれども、「敢えてトンデモ言説と嗤いつつ」(あとがき)と著者自らが書いているように、本質はかなり真面目な本なのだ。

戦争中、英語は「敵性言語」とされ、社会からすべて駆逐された……というわけではなかった。少なくとも高等学校以上の中・上級学校の受験科目には「英語」が入っていたし、昭和十九年には国民学校高等科用準国定教科書「高等科英語」が刊行されていた。

こんな話も、これまではっきりと認識していなかったので、なるほどと思う。
その上で著者の紹介するのは、当時の受験雑誌に載った文章である。

英語は日本語である。わが大日本帝国の勢力圏内に於て通用する英語は、明かに日本語の一方言なのである。随つて我等は今日以後、国語の一部として英語を当然学習すべきである。

確かにびっくりするくらい「トンデモ」な内容なのだが、戦時下に英語を学ぶ必要性を説くための苦し紛れの論であったことを思うと、痛ましいような悲しいような気持ちにもなるのであった。

2014年2月10日、ちくま文庫、950円。

posted by 松村正直 at 06:59| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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