1990年に朝日文庫から出たものの新装版。
単行本は1987年、朝日新聞社刊。
秋田県には2、3回しか行ったことがないが、父が秋田の出身なので親近感を持っている。父は中学校を卒業して東京に働きに出てきて、母と出会ったらしい。
大阪人の四割は四国に親類をもっているといわれているが、そういう見方でいうと、秋田県に親類を持つのは東京人であって、大阪人ではない。
という文章があって、まさにその通りという感じがする。
「秋田の人は、初対面の相手に平気でものをいったりするところがないんです。はずかしがりやが多いですね」
という台詞も出てくる。
父は、はたしてどうだっただろうか。
東京に生まれ育った母は、今は山梨県南の身延町というところに住んでいる。
隣りに南部町というところがあって、以前、夏に母のところへ出掛けたついでに、「南部の火祭り」を見に行ったことがある。
岩手県を領地にしていた南部藩の南部氏は、鎌倉時代まではこの地にいたのだそうだ。
甲州南巨摩(みなみこま)郡に南部村という村があり、南部という苗字はそこからとられた。
山梨と岩手がつながっているなんて、全く予想外のことで驚く。
「なるほど」と思ったり、「そうだったのか」と思ったり、読書の楽しみを十分に味わうことのできる一冊であった。
2009年3月30日、朝日文庫、720円。