1993年に安部公房が亡くなってから既に20年が経つが、近年、安部公房に関する本の出版が相次いでいる。安部ねり『安部公房伝』(新潮社、2011年)、苅部直『安部公房の都市』(講談社、2012年)、木村陽子『安部公房とはだれか』(笠間書院、2013年)など。
本書もそうした本の一冊と言っていいだろう。一種の暴露本のような宣伝をされているが、内容はいたって真面目で、安部公房の生身の姿がよく見えてくる内容となっている。小説の取材旅行に関する話なども興味深い。
一九八一年から一九八二年にかけて、採石場や鍾乳洞を巡るドライブ旅行にたびたび出かける。小説のイメージを膨らませるためである。日原鍾乳洞をはじめ、富士山周辺の採石場だったり、ある時は、浜名湖周辺の鍾乳洞から天竜川へのドライブだった。(…)採石場全体の地図がないことを、安部公房は特に面白がっていた。
安部公房は、私が中学・高校時代に初めて好きになった作家で、個人的に強い思い入れを持っている。最初は『砂の女』あたりから読み始めて、文庫で出ていたものはすべて読み、さらに全15巻の『安部公房作品集』を買って全部読んだ。映画の「砂の女」や「他人の顔」なども見に行った。
通信添削のZ会に入った時、ペンネームを「ユープケッチャ」としたのだが、これも公房作品に出てくる昆虫の名前から採ったものである。そんな懐かしい思い出がいっぱいある。
2013年8月1日、講談社、1500円。
毎晩寝る前に読んでおります。松村さんが好きとおっしゃっていて、
初めてだと思いますが、いつ記事になるのだろう、と思っていました。
思い入れがありすぎて出てこないのかしら、と思っておりました。
安部公房の一部制作過程と思われる映像をご覧になったことはありますか。
夢をテープに吹き込んだり、断片的メモを壁一杯に貼って(そこからランダムに取る?)られた様に記憶しています。
もう読んでおられるかもしれませんが、河合隼雄さんとの対談も、短いですが、とてもおもしろかったです。
ユープケッチャですか。
様々な断片から作品のイメージを膨らませていくのでしょうね。
小説を書くのは大変だろうなと思います。