鹿児島市の春苑堂書店が刊行している「かごしま文庫」シリーズの一冊。
著者は鹿児島で長年にわたって教育にたずさわってきた方である。
桜島は文明、安永、大正、昭和とたびたび大噴火を起こしてきたことで知られている。中でも大正3年1月12日の噴火は大きなもので、この時の噴火により、それまで島だった桜島は陸続きになったのであった。
今年はその大正大噴火から100年目ということになる。
島から15キロほど離れた尋常高等小学校の6年生だった子の作文が載っている。
私は眠つたやうな噴火はいつも見てゐましたが、桜島のやうな恐ろしい噴火は生れて初めて見ました。上の原にかけ昇つて見れば、むくむくと高く上る煙は丁度猫の子が何十万匹とかたまつたやうでして、其の晩せつかく御飯をたべやうとしましたら、音もはげしくわりわりわりと大地しんが家をひねるやうにきました。
「猫の子が何十万匹とかたまつたやう」という比喩が何とも生々しい。
噴火の写真を見るとまさにその通りなのだが、なかなかこういう表現は思い付かない気がする。
1994年1月29日、春苑堂書店、1500円。