2014年02月09日

『歌う国民』のつづき(その2)

この本には大正期の「童謡運動」を推進した人物として、北原白秋や山田耕筰とともに、作曲家の弘田龍太郎の名前が出てくる。

この弘田龍太郎(1892―1952)は、高安国世と親戚関係にある。
高安国世の伯父高安月郊の長女百合子の夫が、弘田龍太郎なのである。つまり国世のいとこの夫という関係だ。

国世の姉である石本美佐保は、東京音楽学校(現、東京芸術大学)出身である、弘田龍太郎との関わりも深い。自伝の中で次のように記している。
入試までの一年、夏休み、冬休みには東京に行って、従姉の百合姉さんとその主人の弘田龍太郎さんについて勉強することに決まった。
初めて会った龍太郎氏の風格にまずドギモを抜かされた。ぼう然とした気持で、ママさんと話をする龍太郎氏を眺めていた。身なりかまわず、不器量といった容貌だが、体中からみなぎるような活気が感じられ、その小さい眼はどこか遠くを見つめてかがやき、ママさんの世間話などは無礼にならぬ程度に受け答えして、何か天の声でも聞いているように思われた。

高安家と音楽との関わりは深い。
高安国世も音楽に関する歌をいくつも詠んでいるが、そこにはこうした環境も影響しているのだろう。
  ベートーヴェン
苦しみを知りたる人の楽の音と斯くいさぎよき響聴くかな
かの楽あり楽に相寄る人らありひたぶるの心我にかへらむ
           『年輪』

posted by 松村正直 at 11:19| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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