そこに美しい建物が保存されていた。
西洋の教会とも、日本の城の櫓ともつかぬふしぎな折衷建造物だった。正面(ファサード)は八角形のうちの五つの面でかこまれた二階建造物で、玄関を構造する柱が四本ある。どの柱も、日本の寺院の柱のように、礎石というはきものをはいている。外壁は、白亜である。
この建物は、2011年の東日本大震災の津波によって大きな被害を受けた。流失や倒壊は免れたものの、二階まで冠水し、壁や窓などが大きく破損した。
倒れたる案内板の泥はらひハリストス正教会の由来をよめり
小林幸子『水上の往還』
教会は覆はれゐたり 八角形の屋根の上なる十字架さむく
現在、「旧石巻ハリストス正教会 復元市民の会」「旧ハリストス正教会堂応急保存プロジェクト」などにより、解体・復元に向けた資金集めなどが行われている。