ロダン作バルザック像の写真みてこころに満つる寂しさは何
宮柊二は、どこでこの写真を見たのだろうか。
ロダン作のバルザック像は、フランス文芸家協会の依頼により作られたもので、1898年の完成までに7年の歳月がかかった大作である。けれども、完成当時は「失敗作」と酷評され、協会からも引き取りを拒否されたというエピソードが残っている。
『小紺珠』のは他にも
告白と藝術と所詮ちがふこと苦しみてロダンは「面(めん)」を発見せり
というロダンを詠んだ歌があり、また
試験管を持ち歩むときライナア・マリア・リルケを憶ふは何ゆゑ
疲れたるわれに囁(ささや)く言葉にはリルケ詠へり「影も夥しくひそむ鞭」
といったリルケの歌もある。
こうしたことを踏まえて考えると、宮柊二の見た「ロダン作バルザック像の写真」というのは、リルケ著『ロダン』に挟まれている図版のことと考えて良いだろう。
この時期に出ていた翻訳は、弘文堂書房世界文庫の石中象治訳(1940年)と岩波文庫の高安国世訳(1941年)の二つ。
これは岩波文庫の『ロダン』の図版である。
おそらく、宮柊二の見た写真はこれだったのだろう。
宮柊二の旧蔵書の一部は国学院大学の図書館にあるので、そのなかに岩波文庫『リルケ』初版本があれば話が早いのですが、いま検索したら、それはないようで残念。文庫本までは引き取らない図書館もありますからね。
ほかにも旧蔵書を持っている所があるかもしれないので探してみたらどうでしょう。
ブログの画像でみるかぎり、改版本の写真はより客観的で、ちょっとよそよそしい感じ。これだと「こころに満つる寂しさ」とは出てこないかもしれませんね。
今年一年ありがとうございました!
宮柊二とリルケの関わりについては、もう少し調べてみたいと思います。