2013年12月21日

ご散歩

中島敦が次男の格(のぼる)に宛てた葉書(1940年7月5日付)は、全部カタカナで書かれている。
ノチャクン
マイニチ
ナニシテル?
アヒカハラズ
カサ ヲ モツテ
ゴサンポカイ?

ここで気になったのは「ゴサンポ」という言葉。
今なら「ご散歩」とは言わず、「お散歩」というところだろう。

「お」と「ご」の使い分けについては、「お+和語」「ご+漢語」が基本という話を聞いたことがある。「お願い」「ご依頼」、「お知らせ」「ご案内」といったように。

それならば、本来は「ご散歩」の方が一般的であり、それが次第に「お散歩」へと変わってきたのかもしれない。

調べてみると、「ご散歩」という用例はいくつか見つかる。
宮沢賢治「真空溶媒」(1922年)
 (どちらへ ごさんぽですか
  なるほど ふんふん ときにさくじつ
  ゾンネンタールが没〔な〕くなつたさうですが
  おききでしたか)
坂口安吾「お魚女史」(1948年)
「先生、どちらへ、ゴ散歩ウ? 私も一しょに行きますわよウ。おイヤ? あらア、そんなことないでしょう。アラマ、エヘヘ、言ッチャッタワヨ、アハハ、バカネ、チェッ!」

中島敦の葉書も含めて、いずれも相手に問い掛けている場面で使われている。
そのあたりも何か関係があるのだろうか。

posted by 松村正直 at 20:54| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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