江戸時代に本格的に生産の始まったかつお節が、どこでどのように作られ、人々がそれにどのように関わって来たのかを記した本。かつお節を通して、日本の近代から現代にかけての歴史や、人々の暮らし、経済問題、環境問題までを多面的に描き出している。
焼津(静岡県)、枕崎・山川(鹿児島県)、池間島(沖縄県)、台湾、ポナペ島・トラック諸島(ミクロネシア連邦)、シアミル島(マレーシア)、ビトゥン(インドネシア)など、太平洋を跨いだ各地が登場し、人々のネットワークの広がりを実感することができる。
戦前、沖縄からポナペに渡った人の話の中に
当時は、池間からみたらポナペに行くのも東京に行くのもあまり差がないという感じだった。
とあるのが印象的。当時のポナペは日本が統治する南洋諸島の一つであった。国境という線を外してみると、人々の距離感は全く違ってくるのだろう。
かつお節の生産量が増え続けていることも、本書で初めて知った。1960年が6348トン、1980年は2万2162トン、2010年には3万2759トンになっている。これは調味料やめんつゆなどに使われる量が増えているからであるが、今でもかつお節が日本人にとって大事な食品であることをよく示す数字である。
2013年10月18日、岩波新書、760円。