大正6年から15年までの全18篇を収めた短編集。
高校生の頃に読んで以来の再読だったが、なかなか良かった。夫婦を題材にした話など、かなり大人向けの内容であって、今くらいの年齢で読むのがむしろ良いのかもしれない。
主人公の男は、どの短編でもとにかくすぐ不機嫌になる。
そんな事は他の奴にさせればいいのにと思って不愉快を感じる事がよくあった。 「佐々木の場合」
何しろ自分達が余り不愉快を感じない人間であってくれればいいがと思った。 「好人物の夫婦」
「見るんじゃない、彼方(むこう)へ行って……」自分は何という事なし不機嫌に云った。 「十一月三日午後の事」
然し私はこれから間もなく其処に起るべき不愉快な場面を考えると厭な気持になった。 「流行感冒」
彼は不愉快で仕方がなかった。もう口をきくのがいやだった。 「痴情」
こういうところに、共感してしまう。
共感するべきところではないのだが、つい共感してしまう。
自分にもそういう部分があるからだろう。
他にもいくつか読んでみよう。
2005年4月15日、新潮文庫、520円。
本の表紙、熊谷守一ですね、、、
大好きです。
新潮文庫の他の志賀作品の表紙も熊谷守一です。
二人は生前、親しかったようですね。