年改まりわれ改まらず川に来て海に引きゆくかもめみてゐる
くねりまがり鯰尾坂(なまづをざか)とよぶところ眠り地蔵をみればほほゑむ
ぼんやりしてゐれば何かが見えるといふ隣家にみのる枇杷の明るさ
デパ地下の水の広場に人憩ひポンペイにもあつたひとときのやう
渤海のふるき使節の貌もちてアザラシはゐたり早春の檻
朝鏡無数の亀裂ある顔を写しをり人生も大寒に入る
ごきぶりは見るに大きく死にたれば小さし殺さるる虫として生きる
つがひつつ打ち重なりてありしものふとかがやきて草より飛べり
風神と雷神と来てあらそひし落葉の庭にその香ただよふ
胎内といふ吹雪の街をゆきしとき越後の瞽女のほろびききたり
タイトルの「あかゑあをゑ」は「赤絵青絵」のこと。
「きみは赤絵の茶碗にしろき朝粥をわれは奈良絵の茶碗の茶漬」という歌がある。
10首目の「胎内」は新潟県にある市。
引用した歌以外にも、若くして亡くなった母を詠んだ歌や、「番(つがひ)」という一連が印象に残った。口語や新語なども積極的に取り込んで、85歳とは思えないエネルギッシュな内容となっている。
2013年11月20日、本阿弥書店、2700円。
きみは赤絵の茶碗にしろき朝粥をわれは奈良絵の茶碗の茶漬
専門の立場から一言、
赤絵・・・・・1)いわゆる赤絵といわれるもので赤と緑(あを)の草花鳥の図。
2)絵付に赤がはいっているもの。
あをゑ・・・・緑(あを)の色のはいった図。この歌の場合、奈良県の高取焼か。
高取焼・・・・・誤
赤膚焼・・・・・正