副題は「川から地球を考える」。
私たちが普段使っている行政区分に基づいた地図ではなく、川や水系を中心とした「流域地図」を使ってものを考えることを提唱した本。簡単に言えば、自分の家の前に降った雨が、どの川に注いで、どこを通って、どの海へ注いでいるかを知るということである。
あなたは普段、自分が歩いている足もとの大地のデコボコを意識しているだろうか。
私たちはそれぞれが、慣れ親しみ、信頼し、愛情を感じる「すみ場所」を持つ。それは、生まれながら備わっているものではなく、少年少女のころに感動し、楽しみ、幸せを感じたりした空間が大きく影響するのではないかと私は考える。
著者の述べる「流域地図」に基づいた思考方法の大切さには、納得する部分が多い。けれども、同じ内容の繰り返しが多く、また文体がやや押しつけがましい点が気になった。
温暖化の危機にしろ、生物多様性の危機にしろ、基本的にはどれもこれも、生命圏の大地の凸凹(でこぼこ)、水の循環などを枠組みとして対応せざるをえない課題であることは、とくに難しい思索なしでも自明のことといえるだろう。
こんな文章を読むと、本当にそれが「自明のこと」であるならば、この本も要らないだろうと言いたくなってしまう。
もっとも、あとがきによれば、この本は著者自らが書いたのではなく、編集者やライターが原稿を準備して、それに追加・修正を加える方法で成り立ったそうだ。そうなると、結局どこに問題があるあるのかはよくわからない。
内容が良いだけに、書き方が惜しまれる一冊であった。
2013年11月10日、ちくまプリマー新書、740円。