先日読んだ『水の文化史』の姉妹篇。副題は「日本再発見」。
水と人との関わりを探して、日本全国を旅したルポルタージュ。「旅」1986年1月〜12月号に連載された文章が中心となっている。
1987年に文藝春秋社より刊行された単行本の文庫化。
著者の主張は「自然とは人間が利用してこそ守られる」という一文によく表れている。米作りや山仕事を通じて、日本人は自然と関わり、自然や風景を育んできたという考えである。
「炎天下、一日中踏みつづけるのは辛いので、クリークの端に柳を植えた。その木かげに水車を寄せた」とも、老人はつけ加えた。技術が風景をつくり出していく。
日本で酒が量産化され、酒造産業として確立するようになったのは、竹のタガが発明されてからである。
国鉄米原駅という重要な駅が、なぜこんなところに立地しているのかと、ふしぎに思う人も多いであろうが、それはかつて、そこが琵琶湖東岸の港町だったからであった。
水を中心に考えることで、新しい発見がたくさんある。風景やモノがこれまでと別の見え方をしてくることに気づかされた。
2013年8月25日、中公文庫、724円。