「短歌研究」の対談が、どれも刺激的でおもしろい。
1月号 佐佐木幸綱×鷲田清一(哲学者)「身体と言葉」
8月号 伊藤一彦×池内紀(ドイツ文学者)「牧水の自然と恋の歌」
10月号 吉川宏志×綾辻行人(ミステリ作家)「ミステリと短歌」
昨年8月号の篠弘×梯久美子(ノンフィクション作家)「戦争を短歌はどのようにうけとめたのか」も含めて、単に珍しいゲストを呼んできたという感じではなく、どれも議論の中身が充実している。事前にかなりの準備をして対談に臨んでいるのだろう。話がよく噛み合っており、歌人同士では出て来ない視点や論点が提示されている。
これこそまさに、ジャンルを超えた交流と言っていいだろう。以前、ある人が、短歌の世界で「ジャンルを超える」と言うと、俳句や現代詩の話しか出て来なくて物足りないと言っていたが、同感である。絵画にしろ音楽にしろ、他のジャンルというのはもっと広くいっぱいあるではないか。
加藤治郎の評論集『TKO』(1995年)には、コンテンポラリー・アートの柳幸典の作品の話が出てくる。私は短歌を始めたばかりの頃にこの本を読んだのだが、他のジャンルの最先端と拮抗するものとして現代短歌を捉えていることに、とても興奮したことを憶えている。