涅槃西風(ねはんにし)こころにまるい石ひとつ
みがかれし黒曜石と涼みたり
ゆふぐれのはじまるころのところてん
鉄亜鈴避暑地に行きしことあらず
かたつむり今生分は歩きけり
子らの眸(め)にとつぜん金魚死にてをり
鋸と万力のある大暑かな
揚がるたび河口のみゆる花火かな
鳳仙花子の友だちの友だち来(く)
流星や口の欠けたる益子焼
象の背のほこりうつすら文化の日
入口と出口ばかりの冬木立
渡辺松男さんが歌集ではなく句集を出したことに、まず驚いた。
同時に、何となくわかるような気もしたのはなぜだろう。
近年のシュールで飛躍のある歌風は、俳句との相性が良いように感じていたのかもしれない。
次々と繰り出されるモノとイメージの世界を十分に楽しませていただいた。
2013年10月30日、邑書林、2500円。