第一部には宮柊二についての評論やエッセイ、第二部には宮柊二の秀歌鑑賞100首を収める。本書の特徴は第二部にあると言っていいだろう。
「その一首を声に出して読む場合、どのようなリズムとイントネーションと節調に注意すべきか、筆者の考え方の提示も必要」とあとがきに記すように、著者は一首一首の読み方に関して細かな指示を出す。そのあたりはかなり個性的で、賛否両論があると思うのだが、意味だけでなく調べを重んじる姿勢には共感する。
おそらくは知らるるなけむ一兵(いつぺい)の生(い)きの有様(ありざま)をまつぶさに遂(と)げむ 『山西省』
柊二の代表歌であるこの一首についても、著者はこれまでの鑑賞が「概して気分的で、ことにその下半句に対する詳しい解釈・検討は、ないがしろにされているきらいがある」とした上で、「一兵」「有様」という言葉の意味や使い方に注目する。そして、それらが「柊二の造語といってもよいもの」であることを突き止め、その効果を明らかにしている。
こうした鑑賞から学ぶことは多い。400ページを超える分量も含めて、労作と言うべき一冊である。
2013年5月15日、いりの舎、3500円。