金色(こんじき)のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に
与謝野晶子 合同歌集『恋衣』(1905)
晶子のこの一首は小学校の教科書にも載っている。
「金色のちひさき鳥」のイメージが鮮やかで、人気のある歌である。
その証拠に、現代でもこの歌を踏まえた歌が数多く作られている。
金色(こんじき)のちひさき鳥という比喩を踏みつけて歩(ゆ)く銀杏並木路
宮原望子 『これやこの』(1996)
風立たば金の小鳥の舞ふといふ銀杏大樹を来たりて仰ぐ
来嶋靖生 『肩』(1997)
「金色(こんじき)のちひさき鳥」のちりぢりに濡れて死にゐる境内とほる
小池 光 『時のめぐりに』(2005)
金色のちいさき鳥のかたちしてセシウム帯びし銀杏が散るよ
久々湊盈子 『風羅集』(2012)
100年以上経っても、「金色のちひさき鳥」のイメージはこうして脈々と受け継がれているのだ。これも晶子の歌の持つ力と言っていいだろう。