この対談はまず、「リアル」に関する議論がなかなか深まらない現状と、「アララギ」や「未来」がずっとリアリズムの問題を扱ってきた歴史を述べて、加藤が
少なくともリアルという問題を考えるのであれば、格好の先達、歌の積み重ねがあるので、まずそういったものを踏まえて議論をしていきたいということなんです。
と提起するところからスタートする。
11ページにわたって数多くの歌が引かれ、柴生田の作品と人生、あるいは近藤芳美、岡井隆、斎藤茂吉らとの関係がよくわかる内容となっている。その中で大辻が
「未来」創刊時、岡井さんや他のメンバーは、まず柴生田稔の『春山』の合評から始めているんですね。だから吉田正俊、柴生田稔あたりの叙情っていうのは、彼らの最初の体験としてかなり大切で、大きな原動力になったのでしょうね。
と述べているあたりを読むと、角川「短歌」に岡井の書いている文章の意味も、自ずとわかってくるように感じる。