「短歌」1994年9月号に座談会「昭和短歌を読みなおす13 五島美代子と高安国世」が載っている。参加者は篠弘、島田修二、岡井隆、岡野弘彦、佐佐木幸綱。高安国世について論じる際に、この座談会は非常に参考になる。必読と言っていいだろう。
その座談会の中で、岡井が柴生田稔について触れている。高安の「二人ゐて何にさびしき湖の奥にかいつぶり鳴くと言ひ出づるはや」を「ちょっと近藤さん調だ」と島田が述べたのを受けて、岡井は次のように言う。
岡井 しかし、「二人ゐて」の歌は近藤さんじゃないよ、柴生田稔さんだ。柴生田調を二人とも学んだわけだ。近藤さんはある意味で柴生田さんのエピゴーネンから出発しているもの。だから、いつまでたっても『春山』『春山』って言って、本まで作ったでしょう。柴生田さんの若いころそっくりだ。
柴生田と近藤や高安との関係がよくわかる内容だ。ただ、「本まで作ったでしょう」がよくわからない。昭和16年に出た『春山』(墨水書房)を、戦後の昭和28年に白玉書房から復刊させたことを言っているのかもしれない。