2013年09月23日

角川「短歌」2013年10月号(その1)

岡井隆の連載「詩の点滅」は第10回。
「時代と詩の関わりとは何か」という題の5ページの文章であるが、広い教養と引き出しの多さを感じさせる内容となっている。岡井の散文はいつ読んでもおもしろい。

その中で、特に柴生田稔の作品について触れている部分に注目した。
柴生田は佐藤佐太郎、山口茂吉とならんで茂吉の三高弟の一人だが、今ではあまり取り上げられなくなっている歌人と言っていいかもしれない。
(…)若い、二・三十代の歌人の書くものを読んでゐると、いささか心もとないのは、近藤芳美に大きな影響を与へた柴生田稔(一九〇四−九一年)の歌をほとんど知らないで書いてゐるのであつた。
(…)斎藤茂吉の高弟の一人である柴生田が、当時の「アララギ」でどんな位置にあつたのか、名歌集『春山』にまでさかのぼつて検討する位の用意がないと、そもそも、作品を論ずる資格がない(…)

こんなふうに、だいぶ厳しいことを書いているが、決して嫌な感じはしない。これが岡井の実感であり本音なのだろう。かつては誰もが当り前のこととして知っていたことが、時代が移って伝わらなくなってしまう。それに対するいら立ちと不満があるのだ。

かつて、別の座談会の場でも、岡井が柴生田稔について言及していたのを思い出す。

posted by 松村正直 at 08:25| Comment(0) | 短歌誌・同人誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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