2013年08月28日

映画「風立ちぬ」

原作・脚本・監督:宮崎駿。

(以下、映画の内容に触れています)

評価の難しい作品。

歴史モノとして見れば面白く、関東大震災(1923年)、昭和恐慌(1930年)、上海事変(1932年)、国際連盟脱退(1933年)など、大正末から昭和の初めにかけての時代の空気がよく描かれている。当時の風景や風俗、特に上流階級や知的エリートの暮らしぶりがよくわかる。

一方で、物語としては物足りなさを感じる。登場人物の感情の描き方に深みがなく、あまり心を動かされなかった。飛行機作りの話も、恋愛の話も、どちらも中途半端な印象を受けた。

劇中に「シベリア」という名前の、餡子を挟んだカステラのお菓子が出てくるが、いかにも戦前のネーミングだと思う。シベリア抑留のイメージが強い戦後であれば、こういう名前が付けられることはなかっただろう。

MOVIX京都、126分。

posted by 松村正直 at 07:45| Comment(2) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「シベリア」の命名、なるほどです。
こんど食べてみます(売っているのはたまに見ます。歴史あるお菓子なんですねえ)。
Posted by おおまつ。 at 2013年08月29日 22:03
時代によって、言葉の持つイメージが変るのでしょうね。
戦前のシベリアは、「シベリア出兵」とか「シベリア鉄道」とか、ある種の夢(?)をかき立てる言葉だったのだと思います。

『岩波現代短歌辞典』で「シベリア」を引くと、まず斎藤瀏の

西比利亜の大野打ちひたしよどむ陽に我が屯営の旗はかゞやく

という勇ましい歌が載っています。
その後、「しかし戦後の日本人にとっては、シベリア収容所抑留の悲惨さとして深く刻印されてきた」という記述とともに、窪田空穂の長歌「捕虜の死」や窪田章一郎の

シベリヤの捕虜の臨終(いまは)は想像をこえて知り得ず知らざるがよき

が紹介されています。
Posted by 松村正直 at 2013年08月31日 08:06
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