1995年から15年あまりにわたって「塔」に連載された文章をまとめたもの。全67編。
内容は、短歌のこと、結社のこと、身の周りのこと、故人の思い出などと幅広いが、全体として一つの大きな流れに沿っているように感じる。ほとんどの文章は誌上で一度読んでいるのだが、あらためて印象に残る話がいくつもあった。
短詩型のむずかしさは、自分の文体を確立するということ以上に、そこから抜け出すことの困難さにあるのだろう。
組織というものは、できたときから停滞へ向かって動いていくものである。よほどの努力を続けないと停滞は必然的に全体を覆ってしまう。
短歌という短い形式は、何らかの形で幾重にも読者の目を通すことが大切な詩型であり、もっとも身近に、打てば響くような距離に自分の歌を読んでくれる仲間を持つということを大切だと思うのである。
新樹滴滴」の連載が終ってもう2年半が経つ。やはり永田さんの文章を毎月の「塔」で読みたいという思いが強い。
2013年5月31日、白水社、2200円。