2013年08月14日

鷲田清一・内田樹著 『大人のいない国』


関西在住でともに多くの著書を持つ2人が、現代の日本社会や日本人のあり方につて論じた本。2008年にプレジデント社から刊行された本の文庫化。

対談2本+各3編ずつの文章という構成になっている。対談も文章も比較的短いものなので、それほど深い話にはならないのだが、随所に印象的な部分がある。例えば、社会システムの論じ方についての内田の発言。
格差論や、ロストジェネレーションの論の類を読むと、僕はちょっと悲しくなってくるんですよ。書いているのは三十代や四十代の人なんだけど、それだけ生きているということは、もう立派にこのシステムのインサイダーですよね。この世の中のシステムがうまく機能していないことについては、彼らにもすでに当事者責任があると思うんです。

あるいは、形式的な言葉に万感を込めるという話の中で鷲田が「うた」について述べた部分。
「うた」というのは、私がこれをうたっているんじゃないよ、伝えられてきた「うた」ですよって、まずそういう前提で詠じる。聞くほうも、「あなたの本音だとは決して受け止めません。うたっても、聞かなかったことにします」という顔つきで聞ける。だから言いにくいこととか本当の思いを、逆に、ものすごく形式的に伝える。それもおおっぴらに。

これは、短歌ではなく、おそらく和歌のイメージだろう。近代以降の短歌は、反対に「私がこれをうたっている!」という立場で歌を詠んでいるわけだが、よく考えると本質は意外と変っていないのかもしれない。そのあたりが何とも不思議である。

2013年8月10日、文春文庫、560円。

posted by 松村正直 at 00:40| Comment(2) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
わー 9/18に朝カル中之島で開催される内田さんの対談(http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=210837&userflg=0 )を聴きにいきますので、この本も事前学習で読んでみます!
Posted by pirica at 2013年08月14日 13:58
pirica様
この対談の予習(?)なら、今ちょうど本屋さんに、内田樹×釈徹宗『聖地巡礼』が積まれていますよ。大阪・京都・奈良が舞台なので、関西の本屋に多いのかもしれないですが。
Posted by 松村正直 at 2013年08月14日 17:22
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