2013年08月08日

塩野米松著 『初代 竹内洋岳に聞く』


聞き書きの名手として知られる塩野米松が、登山家・竹内洋岳に取材してまとめたもの。2010年にアートオフィスプリズムから刊行された本の文庫化。2年間、200時間にわたるインタビューをもとに生まれた一冊は、文庫本で525ページという分量で、内容も圧倒的だ。

大事なのは、この本が竹内が14座完全登頂をする前に刊行されていることだろう。偉業達成の後に刊行されたのではなく、まだ達成できるかどうかわからない時点で刊行されているのである。

取材が始まった2008年1月は、竹内が10座目のガッシャブルムII峰で雪崩に遭い、背骨が折れ、左肺が潰れるという重傷を負った半年後のことである。竹内は最初にこう述べている。
あの事故も含めて、私がやっている山登りというものを、ちょっと客観的に残さないといけない、そういう思いはあるんです。なぜかというと、やはり、死んでしまうことは、あると思うんですよね。自分としてはそれなりに自分のやっていることというのは、自分の命をかける価値があると思ってやっているんです。それをなんか伝えるというとおこがましいですけど、何か形にしておかないといけないような気はしてきているんです。

その後、竹内は2008年7月にガッシャブルムII峰とブロードピーク、さらに2009年5月には12座目のローツェの登頂に成功する。この本の元になった単行本が出たのは、その時点である。

2013年7月10日、ちくま文庫、1100円。

posted by 松村正直 at 01:39| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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