副題は「“♪汽笛一声”に沸いた人々の情熱」。
明治33(1900)年に発売されて爆発的なヒットとなった「鉄道唱歌」。その作詞家である大和田建樹と版元の三木佐助の二人を中心に、鉄道唱歌が生まれた背景やいくつかの謎、発売後の反響などを明らかにした一冊。史実をもとにしつつ、ところどころドラマ風な描写も加え、当時の状況を生き生きと描き出している。
今年に入って3回行った勉強会「近世から近代へ―うたの変遷」の1回目に、旧派和歌の手引書の著者として大和田建樹の名前が出てきたのだが、この人はなかなかすごい人のようだ。本書にもこんな話が載っている。
後年の明治35年10月に開かれる百首会では、午前8時に詠み始めて午後7時30分までの11時間30分の間に、312首も詠んでいる。2分間に1首近くを作ったことになろうか。
勉強会の3回目は唱歌の話で、ピョンコ節とも言われるリズムの曲の例として鉄道唱歌の話も出た。意図したわけではないのだが、ちょうど話がつながったようで面白く、和歌・短歌と唱歌の関わりの深さを感じたことであった。
2013年4月27日、交通新聞社新書、800円。