「体験を通すことで、歌が生々しい面を見せて己の内部に立ち上がる」「(…)体感をくぐらせることで歌の読みの手掛かりを得ることがある」といった実例を挙げたのち、柳澤は
(…)実は誰しも自分の経験値を代入して歌の読みを行っている。その経験値が歌への共感や驚異の基盤となり、読みや評価に大きく影響する。それが、プラスに働けばいいが、マイナスに働く場合もある。
と記している。この「マイナスに働く場合もある」というのが、注意しなくてはいけないところだろう。歌会などでも、自分の経験に引き摺られて歌の読みを歪めてしまうケースをしばしば目撃する。