2013年07月03日

佐太郎の穴の歌

用があって佐藤佐太郎の歌を読み返している。
味わいのある歌が多くて、ついつい読みふけってしまう。

僕は鍾乳洞や鉱山、防空壕など、地中に掘られた穴(?)が好きで、そういう場所へよく行っているのだが、佐太郎の歌にもそんな穴を詠んだ歌がけっこうある。
坑道の扉をふたつ過ぎて来て人なき暗き切羽(きりは)を通る  『群丘』
坑道のひとところより聞こえくるポケットに石炭を落すとどろき
坑内に水をたたふるところありて水のうごきは電燈に照る

これは青森に旅して、近くの鉱山(炭鉱)を訪れた時のもの。2首目の「ポケット」は洋服のポケットではなくて、石炭を貯蔵する場所のことである。
地の底に音なく開く方形のうすくらがりを近づきて見つ  『群丘』
ふかぶかと虚しさみつる石切場(いしきりば)底にかすかに人は働く
ひとところ石の窓より外光のさしつつをりて塵光るなり

これは栃木県の大谷石の石切場を詠んだもの。以前、地下の採掘場跡に行ったことがあるが、神殿のような不思議な空間だった。コンサートなども行われているらしい。
地底湖にしたたる滴かすかにて一瞬の音一劫の音  『開冬』
さかしまに石髄たるる洞奥は昼夜にぬれて石ひややけし
音たぎつ地下の滝ありてたちまちにみじかきゆくへ巌(いはほ)に終る

岩手県の龍泉洞を詠んだもの。山口の秋芳洞、高知の龍河洞とならんで日本三大鍾乳洞に数えられている。二首目の「石髄」は耳慣れない言葉だが鍾乳石のことだろう。ここも行ったことがあるので懐かしい。

posted by 松村正直 at 17:27| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。