2013年06月21日

飯間浩明著 『辞書を編む』


国語辞典の編纂者である著者が、今年末に刊行予定の『三省堂国語辞典』第7版を編纂する実際の作業に即して、自らの仕事内容を紹介した本。

「編集方針」「用例採集」「取捨選択」「語釈」「手入れ」といった順序で、具体的な例を挙げながら、時系列に沿って説明している。一冊の辞典が出来上るまでにかかる時間と労力、そして辞典作りに携わる人たちの喜怒哀楽といったものが、ひしひしと伝わってくる。

この本を読んで一番印象的なのは、著者が自らの編纂している『三省堂国語辞典』(『三国』)を非常に愛していることだ。言葉の端々に、その思いが溢れている。

辞典の基本方針には「規範主義」と「実例主義」とでも呼ぶべきものがあって、
実例主義を「鏡」とするならば、規範主義のほうは、同じ「かがみ」でも「手本」という意味の「鑑(かがみ)」です。国語辞典の多くは、どちらかと言うと、「鑑」のほうに重点を置いています。(…)『三国』は、まずは「鏡」であろうとします。

と記している部分など、説明もうまいし、『三国』に対する自負がよく感じられる。

本のタイトルは、映画化もされた三浦しをんの小説『舟を編む』を踏まえたもの。本文の中でも、「読んでみると、最後には温かな充足感が広がり、いい気持ちになれる小説でした」と紹介されている。

2013年4月20日、光文社新書、800円。

posted by 松村正直 at 23:09| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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