2013年06月07日

練乳(その2)

煉乳(ねりちち)の鑵(くわん)のあきがら棄ててある道おそろしと君ぞいひつる
              斎藤茂吉『ともしび』

この歌に詠まれている「君」とは、誰のことだろうか。

「煉乳の鑵のあきがら」を「おそろし」と言っているのだから、やや神経質な感じを受ける。ギザギザになった缶の切り口が嫌だったのか、あるいは道に空き缶が捨てられていること自体が嫌だったのか。

この歌は、歌集では5首の連作に入っていて、次のような詞書が付いている。
九月廿五日土屋文明ぬしと鵠沼に澄江堂主人を訪ふ。夜ふけて主人は「安ともらひの蓮のあけぼの」といふ古川柳の事などを語りぬ

つまり、茂吉の歌に出てくる「君」とは澄江堂主人、芥川龍之介のことなのだ。

茂吉の日記の大正15年9月25日を見ると
午前中診察ニ従事シ、直グ食事ヲシテ渋谷ヨリ品川ニ行ク、土屋君待チヰタリ。ソレヨリ一直線ニ鵠沼ノ芥川龍之介サンヲ訪フ。あづま屋ニ一室ヲタノミ、ソレヨリ女中ニ案内シテ貰ツテ芥川サンヲ訪フ。漢文ノ小説ヲ読ンデヰタ。新潮社カラ出ル随筆類ヲ整理中ダトカニテ俳句ヤ歌稿ヲ見ル。(…)

と記されている。

posted by 松村正直 at 07:17| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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