2013年05月29日

「黒日傘」第1号

「文机」の終刊から1年。高島裕の新たな個人誌がスタートした。

今度の個人誌は高島とゲストが同じテーマのもとに同じ分量の短歌と散文を発表する方式となっている。初回のゲストは石川美南。テーマは「滅び」。

高島の「最後の歌人(うたびと)」30首は、日本の滅びを詠んだもの。仮想的な世界を詠むスタイルは、かつての「首都赤変」を思わせる。
(とうきやう)と声を殺して呟きぬ。東海省省都トンキン暮れて
独立派兵士の額(ぬか)に捺されたる「倭」の文字の上に止まる黒蝿

一方の石川の「お帰り(LANDその12)」30首は、或る家族の歴史を、時間を遡りつつ詠んだもの。石川らしいユニークで実験的な試みである。

散文は高島が「歌人(ヒトデナシ)として生きろ」、石川が「逆10分待ち(LANDその9)」、各2ページ。

以上の特集の他に、高島の短歌「真闇の部屋」30首と散文「短歌のために」が載っている。
汝がために炊き上がりたる白飯(しらいひ)を一日置きてわれひとり食ぶ
生家にて一時間ほど眠りたり、足裏(あうら)ひんやり柱に当てて

編集後記には「初夏と秋。もつとも心地よい風の吹く季節を選んで号を重ねたい」とある。年に2回の発行ということだろう。次号も楽しみである。

平成25年6月3日発行、TOY、500円。

posted by 松村正直 at 08:20| Comment(0) | 短歌誌・同人誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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