――日本近代、その言葉を簡略に言い換えるなら「日本が必死に西洋を模倣した時代」であろう。
つまり、近代歌人の一生が「恋で始まり、孤独を知り、死に至る」、「西洋的人生」であることを断言しているのである。
著者は「西洋模倣時代における短歌」として、「近代秀歌」を選歌しているのだ。
そこで著者は「アララギ男性」という、「文学的野心を持って上京した男性」をひとつのモデルとして説明し、かれらの経歴を追いながら近代短歌を説明していく。
文中には、こういう「 」付きの言葉がたくさん出てくる。そして、よく読むと、これは本からの引用ではなくて、どうも野口さんの言葉であるらしい。
だから、本当にこんなことが書いてあったかな?と思ってみても仕方がないのだろう。すべては野口さんが紡ぎあげた物語である。
この書評を読むと、野口さんが何を考え、何に反発しているのかはよくわかる。けれども、取り上げられた本については何がわかるのか。あくまで野口さんが主役で、本は脇役、そういう書評のように思った。