京都に生まれ育った著者が、町を周回するバス路線に沿って、京都のあれこれを考察し、論じた本。市バスの206番は、京都駅前を出発して、七条通を「東へ」、東大路通を「北へ」、北大路通を「西へ」、千本通、後院通、大宮通を「南へ」、そして七条通、塩小路通を「東へ」たどって、京都駅に戻って来る。
初めて知る話や、気づいていなかったことがたくさんあって、実に面白い。面白いだけでなく、深く考えさせられる。京都関連本にありがちな嫌味なところはなく、楽しんで読むことができる。
十何代か続かないと京都人とは言えないというのは、まっかな嘘だ。(…)京都は、なにより「外様」や「外人部隊」がしのぎを削る場所であった。
これは、創刊以来、京都に発行所を置いている「塔」の歴史を考えてもよくわかる。高安国世は大阪出身だし、清原日出夫や坂田博義は北海道出身、永田さんは滋賀、河野さんは熊本、吉川さんも宮崎である。みんな京都に住んだ(住んでいる)けれど、京都生まれではないのだ。
2013年4月10日、講談社学術文庫、960円。