以前、角川「短歌」(2007年1月号)の時評に「男性歌人の子育ての歌」という文章を書いたことがある。女性歌人が子を詠んだ歌が短歌誌でしばしば取り上げられるのに対して、男性歌人の歌はこれまであまり取り上げられてこなかった。
そういう意味でも、これは画期的な特集だと思う。
50首選から3首だけ引く。
ねぼけては母とやおもふちさき手に父なる我の乳(ちち)をさぐるも
小田観螢 『隠り沼』
おそれなく辞書を踏台にして遊ぶ幼ならよもの書くわがかたはらに
木俣 修 『落葉の章』
あたたかき雨の濡らせる郁子(むべ)の花この子の恋にまだいとまある
伊藤一彦 『青の風土記』