2013年05月03日

田中康弘著 『マタギとは山の恵みをいただく者なり』

秋田県内陸部の阿仁(あに)に20年以上通っている作者が、マタギの暮らしやマタギが食べてきたものを豊富なカラー写真とともに紹介した本。

登場する料理は、熊鍋、熊のモツ煮込み、キリタンポ鍋、ウサギの煮込み、ナンコ(馬肉)とブナカノカの煮込み、ナメコ汁、山菜(アイコ、ホンナ、シドケ)のおひたし、ミズのタタキ、乾し餅、バター餅、イワナの塩焼き、カジカ焼き、ハタハタ寿司、味噌カヤキなど。

どれも珍しく、一度食べてみたいと思うものばかり。

猟で獲たウサギの皮を剥ぎ、内臓を抜き、頭を落として解体する場面なども、すべて写真入りで載っている。近年、千松信也『ぼくは猟師になった』、服部文祥『狩猟サバイバル』、岡本健太郎『山賊ダイアリー』(マンガ)など、狩猟関係の本が多く出版されている。私たちの生活が、こうした現場から遠く隔たってしまったことが、その大きな理由だろう。

狩猟の話だけでなく、自然の中で生きて行く知恵や工夫、自然を利用する暮らしの方法がたくさん詰まった一冊である。

2013年4月10日、えい(木+世)出版社、1500円。

posted by 松村正直 at 08:03| Comment(5) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
わたしの友が猟銃で鹿や猪、鴨などを獲っている。
かけていた罠にかかった鹿を銃で撃ち殺し首を切り解体して焼肉にして食べる。そんな可哀そうなことをするな、というのだが。やはりこれは自然の恵みというべきものか。血ぬきがまずい肉には閉口する。一度、マタギに食べさせてもらったらいかが。
Posted by 小川良秀 at 2013年05月03日 09:58
 まだ四歳くらいのころ、新宿のヤミ市(今の西口が原っぱだったころ)父に連れられてうさぎの肉を売っているのをみました。私もうさぎを飼っていたのでとてもたべられませんでしたが肉のピンクが美しかったです。
 でもサッカリンの甘さだと思うのですが大福を買ってもらい生まれてはじめて甘い物をたべました。なぜ3人姉妹のうち私だけが行ったのかわかりませんが大人になってから思い出せるのは良かったと思います。この欄に口を出すとなぜか大昔のことばかり。
Posted by 佐藤南壬子 at 2013年05月03日 16:52
>小川さま
血抜きの仕方によって肉の味が全く違ってくるのですね。最近はハンターの高齢化と減少が著しいでそうです。

>佐藤さま
今の新宿からはちょっと想像できないような光景ですね。食べ物の記憶は長いこと忘れません。
Posted by 松村正直 at 2013年05月03日 18:31
こんにちは。青森の福士です。マタギの話題なのでつい…。白神山地が世界遺産になる前後のことですが、マタギとともに山を歩き、いろいろなことを教えていただいた時期があります。採ること、捕ることのルールなど聞きながら、滋味とはこういうものかと実感して山の恵みを味わったことは貴重な体験でした。里の桜はまだ5分咲きです。
Posted by 福士りか at 2013年05月03日 22:19
>福士さま
一緒に山を歩いてその場で教えてもらうのが、本当は一番良いのでしょうね。僕の父は秋田の出身ですが、父―僕―息子と3世代で比較すると、自然の中で生きる力のようなものは、世代が進むごとに非常に衰えてしまっているのを感じます。


Posted by 松村正直 at 2013年05月04日 10:59
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