「森林浴」の提唱者であり、樹木が発する「フィトンチッド」の分析や解明に取り組んだ著者が、日本各地の森を訪ねて人間と樹木の関わりについて記した本。「現代林業」1981年1月から12月号に連載された文章が基になっている。
著者の専攻は生気象学。聞き慣れない言葉であるが、これは「身体の生理や人間の生活と気象との関連を明らかにすることを主な課題としている」学問であるらしい。その一環として著者が取り組んだのが、森林が人間の健康に与える影響というテーマであった。
著者は北海道東部の防霧林や下北半島のヒバ林、屋久杉の森、岩手県玉山村のカラマツ林、東京高尾山のスギ林、木曽谷のヒノキ林などを訪れ、さまざまな科学的な調査を行うとともに、そこで働いている人からの聞き取りを行っている。
30年前の本なので、さすがに内容的には古さを感じる部分もあるが、それは「森林浴」などの言葉や考え方が今では既に常識となったからであろう。そういった意味でも、著者の先見の明が随所に感じられる一冊となっている。
1983年9月20日発行、岩波新書、430円。
2013年04月24日
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