「おまえの頭は誤作動している」と父は言って、代理出産で子どもを持つのがどれほどおかしなことかを力説した。
という一文に始まって、子を持つことをめぐるかなりプライベートな話が続く。そして、同世代の歌人の歌を青春や孤独、そして子育てといった文脈から読み解いていく。時評の文章としてどうかという疑問や違和感はあるのだが、その切迫した思いは強く伝わってくる。
そんなことを思いながら、他のページも読んでいると、30代〜40代にかけての歌人たちの家族をめぐる歌が目に入ってくる。
親指と人差し指のあいだにて「いま二センチ」の空気を挟む
永田 紅
千人の祖(おや)となるかもしれなくて、おいんくおいんくミルク飲む吾子
大松達知
ふたりとも「田村」の判を押し終へて離婚届を折りたたみたり
田村 元
なるほど、短歌作品ではこういうプライベートな話はいくらでも出てくる。散文では違和感のあるような内容が、短歌になると別に平気である。そのあたりも、考えてみると面白いことかもしれない。