2013年04月12日

藤田洋三著 『世間遺産放浪記』

小屋、水車、石塁、煙突、銭湯、温泉、壁、稲わら干し、芝棟、人形芝居など、名もなき人々が生み出した「実用の美」を訪ねて記録した写真集。『鏝絵放浪記』『藁塚放浪記』に続く第3弾。247点の写真(ほとんどカラー)が載っている。

曲がりくねった柱と土壁でできた「野良小屋」(広島県三次市)、白の碁石の材料としてパンチングで穴を空けられた後、山積みにされた「蛤碁石の山」(宮崎県日向市)、無数のしゃもじが奉納されている「しゃもじ窟」(大分県中津市耶馬渓町)など、どれも個性的で印象に残る。

そして、ここでも大切なのは、土地と人だ。
筆者が出会った「ゲニス(人)」と「ロカス(土地)」の、忘れがたい物語の一つ。
             「雀おどり」(長野県茅野市)
それが形になったとき、人と土地にまつわる地霊の物語となった。
             「乾燥小屋の屋根」(大分県別府市)

著者の好みとこだわりと情熱が、実によく伝わってくる一冊である。

2007年4月30日、石風社、2300円。

posted by 松村正直 at 07:35| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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