2013年03月27日

川添裕著 『見世物探偵が行く』

買ったまま長いこと放置していた本だが、小沢昭一の放浪芸の流れで読んでみたところ、とても面白かった。2000年から2003年まで雑誌「グラフィケーション」に連載した文章をまとめたもの。

国内外の見世物についてのフィールドワークと文献調査の成果を、幅広い視点から紹介している。取り上げているのは、中国雑技、菊人形、ベトナム水上人形、力石、サーカス、貝細工、大道芸、猛獣つかいなど。ベトナムの水上人形劇は、一度ベトナムで見たことがあるので懐かしい。

東アジア文化圏の交流を視野に入れた上で、
江戸時代が「鎖国」の時代という見方は一面的であり、その性格をめぐって種々の議論があるが、いわば多数の留保条件付きの「外交」という見方も可能である。

と述べた部分は説得力がある。また、かつての古館伊知郎のしゃべりを、口上話芸の流れの中に位置付けるなど、随所に鋭い指摘が見られる。

浅草の凌雲閣(十二階)や東京タワーについて論じた章の最後に、著者は
高い塔からの見晴らしは、確かに素晴らしい。ことば通り高揚感がある。しかし、高いばかりが能ではないし、あまり高すぎてもいけない、そんなことを思うのである。

と述べている。この本は東京スカイツリーのできる前のものだが、はたしてスカイツリーは見世物としては、どうなのか。そんな興味も湧いてくる。

2003年11月10日、晶文社、2400円。

posted by 松村正直 at 07:27| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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