2013年03月10日

赤と紅

「短歌往来」1月号の今野寿美さんの特別作品「港の秋の」33首の中に、こんな歌があった。
字足らずを補ひながら呼ばれきて珊瑚樹はまた紅き実を生(な)す
赤でなく紅と書かねばならぬことたぶんきみにはどうでもよきこと
赤でなく紅でなければならぬこと 一生かける人、かけぬ人

珊瑚樹の実を「赤」と書くか「紅」と書くかの違いが詠まれているのだが、これらの歌は、おそらく次の二首を踏まえたものだろう。
珊瑚樹のとびきり紅き秋なりきほんたうによいかと問はれてゐたり
              今野寿美『世紀末の桃』
珊瑚樹がとびきり赤き秋ありきこの世に二人が知る赤さなり
              三枝昂之『上弦下弦』

プロポーズへの返事をめぐるやり取りを詠んだ今野さんの歌と、30年後にその返歌として詠まれた三枝さんの歌である。

この二首を踏まえて、「赤」と「紅」の違い、「赤でなく紅でなければならぬ」理由を
どのように読み取るか。そのあたりが問題になるのだと思う。

posted by 松村正直 at 20:44| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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