少年の日の二月二十六日かの日より追憶はいよよ暗くなりゆく
岡野弘彦『冬の家族』
走りゆきし軍靴の凹み雪のうへに殘りき二月廿六日明け方の凹み
森岡貞香『少時』
2・26事件が起きたのは昭和11(1936)年のこと。
その日の東京は雪であった。
工藤美代子著 『昭和維新の朝 二・二六事件と軍師斎藤瀏』 には、当日の様子が次のように書かれている。
夜来の雪は朝がたになってその量を増したようだった。
斎藤瀏は浅いまどろみの中で雪の降る光景を見たような気がしていた。輾転反側、五時ごろには起き上がった。まだ電話は鳴らないな、と思いながら廊下の雨戸を開ければ思ったとおり一面の雪景色だった。
そんな雪景色の早朝5時に、一斉に襲撃が行われたのである。
「歴史上の事件」×「雪」ということで思い出すのは、忠臣蔵、桜田門外の変、そしてこの2・26事件といったところだろうか。そう考えると、みなテロ事件であるということも含めて、何か共通点が多いような気がする。