これまであまり知られていなかった『潮音』入会以前の葛原妙子について、高等女学校時代の短歌や文章を紹介しつつ論じている。国文学研究においては当り前のことなのだろうが、一次資料に当って文章を書くことの大切さをあらためて感じさせられた。
しかも、単なる資料の発掘にとどまらず、そこに丁寧な分析を加えている点が光っている。
妙子は、すでに十代の頃に一度、詩歌の趣味に目覚めていた。『潮音』参加当初の歌を、あまり単純なもののように思わない方がよい。
という結論部分も、十分な論拠を示した上で記されたものなので、非常に説得力がある。
こうした評論を短歌総合誌で読めるのは、とても嬉しい。